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2014年より、コラム連載を書かせていただいてるインド初無料日本語情報誌【月刊チャロー】
今日は7月号に掲載された記事をお届けします*


《ネパールの病院》
ネパールの医療事情は首都・カトマンズと農村部では雲泥の差だ。
カトマンズの病院は海外から設備や技術がどんどん導入されつつあって
日本とさほど変わらないレベルの病院も少数だけど存在する。

一方、農村部ではまず物理的に近くに診療所がないのと
病気は悪霊によってもたらされるという考え方が未だ広く信じられているので
ダミと呼ばれる呪術師が民間療法を行うのが主流だ。
民間療法は昔から伝わるアーユルヴェーダや薬草の知恵を活かしてプラスに働く場合もあるし
白内障患者の眼球を針で刺して失明させてしまうケースなどマイナスに働く場合も少なくない。

さて、今号は前号の“ネパールで出産”の続きでネパールの病院のお話。
通常ネパールでは出産の翌日か翌々日には退院するのだけど
うちは息子が予定より1か月も早く生まれてきたため、念のため1週間入院することになった。
病院の最上階にはガラス張りのサンルームのような小部屋があって
赤ちゃんたちを裸にして日光浴させる時間が毎日小1時間ほどあった。
まだへその緒のついた産まれたての赤ちゃんたちが裸でゴロゴロ並んでいる光景はとても愛らしかった。

ネパールの入院生活で日本と大きく異なる点は、食事が出ないこと。
わたしが入院していたノルヴィック病院は敷地内にカフェテリアがあり
電話でオーダーすると食べ物をデリバリーしてくれるが
それはネパールではかなり特別なことで、通常は家族が毎回食べ物を運んでこなくてはならない。
ネパールでは産後のお母さんたちは
メティ(フェヌグリーク)とジョアノ(アジョワン)と呼ばれるスパイスをたくさん食べる。
これは女性ホルモンのバランスを整え、母乳の出をよくするためである。

そんなわけで毎日元義母がメティとジョアノたっぷりのジャウロ(おかゆ)を作って病院まで持ってきてくれた。
ほろ苦くてすっきりとした味わいが好きだったけれど
スパイスと塩味のみで具が全く入っていないシンプルなジャウロは3日連続食べたらさすがに飽きてくる。
そんな矢先、日本から母が納豆と焼き鯖寿司とお赤飯を持って初孫に会いにきてくれた。
美味しくて、とても嬉しかった。

そういえば退院後の乳幼児健診で再度病院を訪れた時に驚くべき光景を目にした。
中年男性の遺体がイロトリドリの花に埋め尽くされて、人通りの多い病院の中庭に安置されていたのだ。
司祭らしき人がなにやら儀式を行っている。そしてその周りには100名ほどの野次馬が。
昨日心臓発作で病院に運ばれてきたけれど、さきほど亡くなったんだと近くにいた人が説明してくれた。

日本でも毎日たくさんの人が病院で亡くなってる。
けれどわたしはそれを一度も目にしたことがない。
できるだけ人の目に触れないように、そして死を感じさせないように配慮されているんだろう。

輪廻転生という考え方が根付いているネパールでは、死は包み隠すことでも不吉なことでもないらしい。
西洋医学が少しずつ浸透しているけれど、西洋思想とは異なる独自の死生観はしっかりと残っているように感じられた。

そっと手を合わせ小さな息子を抱いて小児科へ向かった。
子どもだらけの小児科待合室に着くと
スクリーンからはかなりアグレッシブな女子プロレスの試合が流れていたのであった(笑)
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2016.07.01 Fri l ネパールの生活 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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